給水ポンプってなに?|仕組みやメンテナンス頻度についてプロが詳しく解説!
生活する上で欠かせない、”水”。
普段なにげなく使っている方がほとんどかと思いますが、いつでも自由に蛇口をひねると水が出てくるのは、縁の下の力持ちとして給水ポンプが働いてくれているから。
『この記事では、給水ポンプの仕組みやメンテナンス方法などについて詳しくご紹介します。』
(投稿:2022/04/08)
(追記:2022/09/10)
目次
給水ポンプとは
一般的な戸建てや3階建て程度の住宅には、浄水場から送られてくる水圧を利用し、各家庭の蛇口に直結して水が給水される仕組みになっています。
給水ポンプは、マンションやビルなど、高層階または広範囲まである建物に設置されている蛇口に水を届けるための装置。
浄水場から送り出す水圧では高層階に水が届かないため、間に給水ポンプを挟み、高い位置にまで水を送り届けられるようにしています。
配管内の圧力が弱まると、給水ポンプが水圧を増加させる働きをしています。
1階に設置されている蛇口からも、超高層階に設置されている蛇口からも、同じ水圧で蛇口から水が出てくるのは給水ポンプが水を送ってくれているため。
『5階建て以上の建物には、給水ポンプが設置されている事がほとんどです。』
給水ポンプの種類と仕組み
給水ポンプはの種類は、大きく別けると下記の3つ↓
直結増圧方式
直結増圧方式は受水槽や高置水槽を使用せず、名前の通り給水管に増圧ポンプを直結。
浄水場から送られてくる水圧では足りない圧力をポンプによって増圧させる事で、安定して水道水を給水する事が可能になります。
受水槽、高架水槽、ポンプ室を設置する必要がないため、それらの保守管理が不要になり維持費が抑えられるのがメリットです。
受水槽などに貯めた水を使用しないため、常に新鮮な水を使用できるのがメリット。
ポンプに不具合が発生したり停電すると、給水停止になってしまうのがデメリットです。
各市の条例によって上限階数制限等があります。
新規で取り付けたい場合は、水道局へ改造申請を行ってください。
加圧給水方式
受水槽から各家庭の蛇口に水を圧送するタイプのポンプ。
陸上型と水中型があり、中規模のビルやマンションなどで使用されている給水ポンプです。
屋上などへの高架水槽設置が不要になります。
急な断水時などでも、受水槽内に水が残っている場合、ある程度の水を確保できるのがメリット。
受水槽の定期的な清掃などの保守管理にコストがかかってしまう点と、受水槽に水を溜めている間に水の鮮度が落ちてしまうのがデメリットとなります。
高架水槽方式
高架水槽方式は受水槽に貯まった水を、屋上に設置されている高架水槽までポンプで汲み上げます。
高架水槽に溜まった水は、落ちてくる水の勢いを利用し各家庭の蛇口へと給水。
高架水槽に貯まっている水が一定量まで減ると、揚水ポンプのスイッチが自動的に入る仕組みになっていて、必要な時のみ稼働するため、他の給水方法と比較すると電気代を抑えられるというメリットがあります。
大型集合住宅やビルなどで、広く用いられている給水方法。
『建物の高さなどによって、最適な給水方法が別れています。』
運転方法
給水ポンプは、建物の大きさや使用方法などによって適切な運転方法があります。
単独運転
単独運転は、1台の給水ポンプで圧力や流量検出によってON/OFFを切り替えます。
単独交互運転や交互並列運転と比較すると、機能面では劣りますが導入コストを抑えられるのがメリットです。
単独交互運転
単独交互運転は、給水ポンプを最低2台1組で使用。
運転稼働率が高い給水ポンプは、集合住宅などで水を使い続ける状態が続くと、モーターが回りっぱなしになってしまいます。
仮に大型の集合住宅などで、給水ポンプ1台のみで稼働させていると、モーター内部のコイルというパーツが焼けてしまったり溶けてしまう恐れがあります。
そのため、2台の給水ポンプで1台目が稼働した後は、1台目は休止し2台目が稼働するシステムになっています。
2台のポンプが交互に稼働する事で、1台にかかる負荷を軽減させる事が可能。
また、どちらか1台で不具合が発生した場合、もう片方のポンプで単独自動運転が可能というメリットがあるため、給水を一時的にも止められないマンション、工場、学校などで多く用いられています。
交互並列運転
交互並列運転は、最低2台1組の給水ポンプが基本的には交互に稼働するシステムになっています。
交互運転と異なるのは、使用した水の量が増加し1台のポンプでは賄いきれなかった際、2台同時に稼働するという点。
水を多く使用する工場や、夕方などの同じ時間帯に水の使用量が増加する可能性があるマンションなどに用いられています。
『建物の規模などによっては、3台以上のポンプを設置する事もあります。』
給水ポンプが故障したらどうなる?
給水ポンプが設置されている建物で下記のような症状が現れた場合、給水ポンプに不具合が発生している事が考えられます。
・水圧が不安定
・水が出ない
・給水ポンプから水漏れしている
・漏水または水道料金が高くなった
・給水ポンプから異音がする
・給水ポンプが振動している
給水ポンプのゴム部品や消耗品の劣化による不具合、あるいは弁にゴミなどの異物が詰まっている場合は修理で不具合解消する事も可能。
制御盤やユニット配線の漏電など、電気系統で不具合が発生している場合は、思わぬ事故に繋がってしまう恐れもあるため早めの対処がオススメです。
『給水ポンプが熱くなっている場合は危険ですので、早めに電源を切るようにしてくださいね。』
メンテナンス方法や頻度は?
日々使用する給水ポンプで不具合が発生すると水が使用できなくなる恐れもあり、生活や社会活動に支障をきたしてしまいます。
そこで大切なのが、メンテナンスです。
定期的にきちんとメンテナンスをしておけば、大きなトラブルを未然に防ぐ事が可能となります。
給水ポンプの各メーカーでは半年に1回程度の点検を行い、圧力タンク内の空気圧力を適正に保つ事が推奨されています。
タンク内の空気圧が適正値より低くなってしまうと、ポンプが短時間の間にON/OFFを繰り返す起動頻度過多という症状が発生してしまう事も。
起動頻度過多になると、建物上階では水圧が安定しなくなる恐れがあり、電気部品の消耗が激しくなってしまうため、放置すると給水ポンプの故障へと繋がります。
直結増圧ポンプにおいては、年に1回以上点検を受ける事が義務付けられていて、逆流防止機能、運転制御機能などの点検を行います。
また、給水ポンプのメンテナンスとして、オーバーホールという方法もあります。
オーバーホールとは?
オーバーホール(英語: Overhaul)とは、機械製品を部品単位まで分解して清掃・再組み立てを行い、新品時の性能状態に戻す作業のことである。
通常の点検作業(メンテナンス)では出来ない清掃作業や劣化部品の交換、調整を主目的とする。一般的には、使用される部品に対して時間や距離などの耐用限度を想定し、その想定に基づいた間隔で行われる点検である。
引用元:Wikipedia
オーバーホールは給水ポンプを分解し、内部を細かく点検。
劣化してるパーツなどを交換する作業を行い、劣化などによるトラブルを未然に防ぐ事が可能となります。
『給水ポンプのオーバーホールは、設置から4〜7年ほど経過して行うのが理想的です。』
寿命と交換時期
メーカーなどによっても多少は異なりますが、給水ポンプ本体の寿命(耐用年数)はおよそ10〜15年。
また、給水ポンプの部品交換時期はパーツごとに異なります。
分類 部品名 取替の判断基準 取替周期の目安 全体 ユニット全体 ユニット全体を取替(更新) 10年 オーバーホール 分解・点検・整備 4〜7年 ポンプ 軸受 軸受が過熱したり、異音が発生したら取替 3年 メカニカルシール 目視できるほど漏洩する場合は取替 1年 グランドパッキン 増し締めしても著しく水漏れする場合は取替 1年 制御盤 電磁開閉器 誤作動したり接点の荒損がひどい場合は取替 3年 リレー・タイマ 誤作動したり接点の荒損がひどい場合は取替 3年 プリント基板 各運転の動作が不確実な場合は取替 3年 機器類 逆止弁 弁の動作に不具合が生じたら取替 3〜5年 減圧弁 圧力設定値に誤差が生じた場合は再調整を行い、不確実な場合は取替 3年 圧力タンク(隔膜式) ポンプの停止時間が極端に短くなったら取替 3年 圧力計、連成計 圧力を抜いて指針が“0”を示さなければ取替 3年 圧力スイッチ 圧力設定値に誤差が生じた場合は再調整を行い、不確実な場合は取替 3年 圧力センサ 圧力設定値に誤差が生じた場合は再調整を行い、不確実な場合は取替 5年 フロースイッチ 動作が不確実な場合は取替 3年 フート弁 弁の動作に不具合が生じたら取替 2年 引用元:テラル技術資料
しっかりとメンテナンスを行い部品交換をこまめにしておく事で、不具合が少なく安全安心に給水ポンプを使用できます。
『10年を経過した給水ポンプで不具合が発生した場合、本体交換対応になる事がほとんどです。』
まとめ
高層階の建物には欠かせない給水ポンプ。
生活や社会活動には欠かせない存在ですので、メンテナンスをきちんと行い長く安全に使うようにしましょう。
少しでも異変に気付いたら、早めに業者にご相談される事をオススメします。